法律相談Q&A

顧客の破産にどう対応すべきか -NEW-

Q: 日系企業の当社で、感染対策期間中に、中国国内顧客より破産申立てを受けたとの通知があり、先方の当社に対する未払いの代金が正常に支払われなくなりました。このような場合、自社の権益を最大限に守り、債権を回収するにはどうすればよいでしょうか。

A: 新型コロナウイルスの感染流行が企業に甚大な影響をもたらし、企業では注文が大幅に減少し、従業員が勤務に復帰できなかったり、各種のコストが増加して資金不足となったことにより、債務が期限通りに弁済されない場合、債権者が顧客に対し破産を申し立てる可能性があります。現在多くの企業で生産の維持が困難となっている中、顧客が破産し、債権金額が回収できなくなれば、すでに経営が困難となっている企業にとっては困難が重なることになります。このため、顧客が破産した状況で、いかにして自己の権益を守り、可能な限り債権を回収し、損失を減少させるかは、企業が必ず直面する課題となります。顧客が破産を申し立てられた場合、企業では以下のような面からの対応が可能になると思われます。

1. 顧客への対応を重視し、積極的に参加する
   実務上、企業によっては顧客はすでに破産したものと判断し、裁判所の要求の通りに債権申告を行っても、弁済を受けられる可能性はきわめて低いと考え、いっそ債権を放棄してしまうということもあるかもしれません。このような考えは正しいものではなく、顧客が破産した場合に積極的に働きかけることをせず、そのまま放棄してしまうと、企業の株主や債権者からの詰問や責任追及を受ける可能性があります。さらに、税務機関からの質問が企業だけでなく日本の親会社にまで及ぶ可能性もあります。このため、顧客が破産手続きに入った初期の、破産の原因、破産財産、破産債権等についてまだ明らかになっていないうちに、権利を放棄してしまうことは、企業にとっても適当なことではありません。
   反対に、企業が積極的に破産手続きに参加すると、弁済を受けられる可能性を最大限に高めることができます。企業は破産手続きに参加することで、債務者の基本状況、破産の原因、債務者の資産状況、負債の状況について把握し、債権者の申告した債権を確認し、管財人の費用や報酬を審査し、破産債権の管理や換価・分配案について表決を行い、破産財産の分配に参与することができます。

2.積極的かつ速やかに措置を講じて損失の拡大持続を防止する必要がある
   顧客が破産手続きに入ったら、損失の拡大持続を防止するために、企業は速やかに有効な損失阻止の措置として、契約の履行中止、輸送中の貨物の回収等を行うことが可能です。企業が速やかに関連の措置を取らずに損失の拡大を招いた場合、その部分の損失には破産債権の割合に応じた弁済しか受けられません。顧客が破産手続きに入った場合にどのような措置を取って損失の拡大を防止すべきかは、案件別の検討が必要であり、専門性の高い対応となるため、専門の弁護士のサポートのもとで行う必要があります。

3.誤りなく正確に債権を申告することの重要性
   顧客が破産手続きに入ったら、管財人から企業に債権申告等に関する書類が送付され、企業では規定の通りに債権申告を行わなければならず、企業が債権申告をしないと、破産プロセスに参与し、破産財産の分配を受ける資格を得ることができません。
   債権申告は一見、管財人に債権金額を申告するだけのように見えますが、実際には非常に複雑な手続きであり、訴訟の基準に照らして債権を申告し、関連の証拠を準備することとなります。自己の利益を最大化するため、企業が債権を申告する際、回収されるべき債権の金額を申告するだけでなく、利息や損失等も主張することができ、債権の性質が優先債権、普通債権のいずれに属するかを明確にし、債権申告に関する情報を関連の証拠に整理することができます。債権申告は債権弁済の順序や弁済金額を直接決定するものとなるため、専門の弁護士のサポートのもとで行う必要があります。

◇日系企業へのアドバイス
   顧客が突然破産したことにより企業が損失を被る事態を回避するため、以下の面からの予防と対策が重要となります。

(1)契約内容を見直し、顧客の破産に関する条項を追加する
   社内で使用している契約書について専門の弁護士により見直しを行い、顧客と交渉して取引条件を変更したり、契約内容を改めて取り決め直します。例えば、支払方式を納品前の先払いとする、所有権保留条項を約定するとともに、顧客の現有資産を最高額として抵当権を設定する等の担保提供を要求することが考えられます。

(2)従業員向けに債権回収に関する法律研修を実施し、売掛債権の管理を強化する
   専門の弁護士により、会社の従業員向けに売掛債権に関する法律研修を実施し、取引前に顧客の信用状態や訴訟問題の有無を調査することによって顧客の契約履行能力を確認することや、顧客との契約の締結の仕方や関連の留意点、契約履行過程におけるリスクコントロール、証拠の保全等についての意識を高めます。

(3)顧客に破産する兆候が見えたら、直ちに損失拡大防止の措置を取る
   実際には、破産手続きに入る前から、従業員に休暇を取らせたり、生産を停止したり、訴訟が多くなったり、支払いが期限通りに行われない等といった破産の兆候が現れる企業が多く、顧客にこれらの状況がある場合には、企業で早目に関連の措置を取り、顧客に支払い期限の前倒しや担保の提供等を求め、これに応じてもらえないようであれば契約の履行継続を拒否することもできます。ただし、そのような場合は慎重に対応しないと、不備があった場合には顧客から違約を主張され、損失の賠償を要求されるおそれがあります。このため、顧客に破産の兆候が見られたら、専門の弁護士に相談して関連の対策を検討することで、顧客から違約の主張を受けることなく債権を保全するという目的を実現します。

(4)専門の弁護士に全過程への参与を委託し、自社債権を最大限に回収する
   顧客の破産は非常に複雑なプロセスとなり、債権の申告方法や、いかにして破産手続きに参与して自社の債権への弁済問題を直接決定するかが問題となりますが、専門の弁護士に破産のプロセスの全過程に参与してもらい、企業の損失拡大の防止措置、債権申告、債権の金額及び性質についての管財人との協議・交渉、債権者会議への参加、関連事項の表決等、さらには財産の分配、管財人の職務履行の監督等に至るまで、あらゆる関連の対応にサポートを受けることをお勧めいたします。

作成日:2020年08月27日